財務省の勝利
かつてトルーマン大統領は、
アイゼンハワーに権力を引き継ぐ際、
次のように言ったそうです。
「大統領の椅子に座って、
これをしろ、あれをしろと命令するだろうが、何も起こらない。
かわいそうなアイクよ。
陸軍とは全然違ってフラストレーションがたまることだろう。」
官邸主導で突っ走ってきた安倍政権も、
このところ、フラストレーションがたまってきているようです。
とりわけ経済政策については、
安倍首相がやりたかった規制改革(新自由主義的な構造改革路線)が、
就任以来、ことごとく党内と霞ヶ関の抵抗にあい、
はっきり言ってほぼ全部つぶれています。
法人実効減税しかり、雇用の流動化しかり。
それでも、政府・霞ヶ関には、
「消費増税10%」という最大の戦略目標がありましたので、
「何が何でも今年7-9月の景気を上向かせるだろう」とみられてきましたが、
そのインセンティブも薄らぎつつあります。
多少、景気が悪かろうが何だろうが、
もう、増税に文句をいう人がいないからです。
考えてもみてください。
国会のなかで、消費増税に反対する勢力は誰ですか?
これまでは、
みんなの党(+結いの党)、生活、共産、社民
が頑張っていました(他はほぼ、増税賛成)。
ご存じのとおり、先々週くらいまで安倍政権は、
集団的自衛権容認のために、
公明を切って、みんなを取り込む戦略を立てました。
このとき、「ナベノミクス」なる新自由主義的な経済政策が、
第2次政権に「お土産」としてもたらされる予定であったことは、
前ブログでもご指摘したとおり。(⇒参照)
しかし、これは例の「熊手党首」の騒動で頓挫しました。
熊手さんとたもとを分かった結いの党は、
維新との合流のために、
江田さんが石原元都知事に頭を下げています。
維新は増税勢力です。
共産党だけは勢力を伸ばしていますが、
強行突破したところで政権にとっては痛くもかゆくもありません。
よほど景気が悪くならない限り、
国会(野党)対策で頭を悩ます必要はなくなったわけです。
では、マスコミはどうか?
詳しくはここで書けませんが、
大新聞で増税反対の新聞がありますか?
ないんです。
2011年~12年頃の間に「あること」があって、
読売新聞が元財務次官の天下りを受け入れたりして、
メジャー紙のすべてが白旗をあげて「増税賛成」です。
テレビと雑誌はまだ、増税への懸念を伝えていますが、
電波法をちょっといじればテレビ局は「即時全面降伏」しますので、
もはやちっとも脅威になりません。
つまり、「財務省の悲願」である、
消費増税を邪魔する勢力はほぼなくなったのです。
安倍首相が個人的に何を思おうとダメ。
国民がネット上でどれだけ吠えようとダメ。
財務省の完全勝利です。
これを反映して、
「経産省内閣」と呼ばれた安倍政権が、
最近では「財務省内閣」と囁かれつつあります。
ここから安倍首相がどんな粘り腰をみせるかは見物ですが、
財務省と組んで、秋の補正予算、来年度予算をたっぷりもらいたい
与党の重鎮たちから「年内倒閣」だの「年内解散」だのという
物騒な言葉が聞こえてくるようになっていることに、
私はちょっと戸惑っています。
このブログは「相場に直結する情報」を提供することが目的ですが、
先週あたりから急に、
与党実力者や霞ヶ関の人々が、
「株価がそんなに高い必要はない」と、
揃って言い始めたことを書いておきます。
確かに、昨年末は、
「せめて16000円くらいはないと次の増税は無理」
という声をよく聞きましたが、今は、
「まだ14000円もある」
と嘯く人がほとんどです。
実際、安倍首相が8%への増税を決めた頃、
株価は14000円台で行ったり来たりでしたから、
増税を断行してもまだ同じレベルの往復相場であれば、
「増税の影響は皆無」と言い切ることが可能です。
むしろ、国民の関心は、
失業率や有効求人倍率、また、平均賃金など、
別の指標に移っていますが、
これらは補正予算での財政出動や、
企業への働きかけや最低賃金法など、
株価維持、操作以外の政策要因で維持が可能です。
安倍内閣が何をもって消費増税を決断するのか、
最終的にはご本人しかわかりませんが、
安倍首相をとりまく状況が、
先々週、先週と一変したことは頭に入れておきたいところ。
政界は一寸先は闇。
相場は騙し、騙され合い。
「こうなるだろう」
「こうなるはず」
といった「予測」や「思惑」など、
何の役にも立たないことをあらためて痛感します。
この件、非常に大切なポイントですので、
引き続きウォッチいたします。
いつ、どんなタイミングで潮目が来て、
流れが一変するか、まったく予断を許しません。
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連日の投稿なので、今日はパスの予定でしたが、さすがに今日のブログの内容はショックでした。
渡辺氏も猪瀬氏も有能な政治家なのにつまらない事で失脚して残念です。
安倍首相に対しては個人的には応援したいです。自民党も野党に転落した時は神妙な態度でしたが、復活してからしばらくしてまた古い自民党に戻ってしまったようです。
小泉元首相なら、規制改革を断行する力がありましたが、安倍首相だと厳しいかもしれません。
改革が出来ない自民党なら今後支持率アップもむずかしいでしょうが、野党がだらしないので
自民党政権はしばらく続くことでしょう。
昨日のブログから年内に14000円回復するかもしれないコメントを拝見して、異変に気がつきましたが、今日のブログで得心しました。
旧守派が頭をもたげたならば、TPPの交渉に
向かった甘利大臣も思い切った政治決断は
厳しそうです。
貴重な情報ありがとうございました。
追伸
空売り比率が35%ほどと上昇してるそうです。
この水準からでも売りから入るとは驚きです。
政界は一寸先が闇です。
昨日まで、肩で風を切って歩いていた人が、ある日、突然、力を失うことは日常茶飯事。盤石と思われていた集団が、一瞬にしてちりぢりバラバラになる姿を、何度も見てきました。
イケイケドンドンの雰囲気で、明るく、暖かく、輝いていた部屋が、ある瞬間に気温が5度くらい下がり、重くじっとりした空気がまとわりついてくる感覚を何度も経験しています。
相場も同じです。
明日のことはわからないのです。
今、目の前にある材料を積み上げ、「こうなるはず」と「予測」したところで、皆が予測を組み上げたその瞬間に、前提となる材料そのものが陳腐化しています。
HSさんは連日のように独自の分析を送ってくださっており、頭が下がるのですが、私は人の「予測」は最初から一切「読まない」主義ですので、HSさんの貴重な労力を無駄にしないためにも、今後、「予測」の送付は結構です。
現実に、実際の相場展開から大きくはずれている以上、私も読者の方々への責任として掲載するわけにはまいりません。
ちょっと厳しい言い方をするならば、HSさんがお読みになっている専門家の先生方の「予測」は、どこかから収集してきた2次情報、3次情報を加工したものです。そこから組み立てたHSさんの「予測」は4次情報、5次情報。誰もが実感しているように、相場は情報取得のタイミングがわずかでも遅れたら使い物になりません。
私がこのブログを運営しているのは、専門家の先生方が入手する情報の、さらにその元の情報を、空気感とともにお伝えすることが目的です。
HSさんにおすすめするのは、例えば、国会中継の予算委員会などをリアルタイムにじっくりとみて、首相、財相、経産相、日銀総裁などの「生」の答弁の内容をその場で分析することです。どうせ官僚の作文を読んでいるとはいえ、微妙な用語の使い回し、表情、声のトーンなどで、何年かたったら「何か」がわかるようになります。その「何か」が1次情報です。私はこうした情報収集を、あらゆる方面に広げて行っております。
HSさんの幸運をお祈りしております。