日米当局の「決断」は、ほぼ事前リークの通り。

ただ、日銀が今回の決定会合で実施するとみられた、

「マイナス金利の深掘り」は次回以降に先送られ、

先に「副作用」対策に着手されることになったため、

金融株に安堵の買いが集まり、日経平均は上昇しました。

これは、ちょっとしたサプライズ。

「金融機関のための金融政策ではない」と、

傲然として冷たく突き放した半年前と違い、

「市場に優しい黒田総裁」に変貌を遂げたわけです。

黒田日銀の新しい「対話」の手法といえます。

金融政策の「枠組み変更」に関する一連の発表を、

市場はひとまず円安株高で迎えたことをみても、

「総括的検証」を受けての日銀と市場の「対話」は、

まずは成功裏に終わったと言ってよいと思います。

ただ、米国FOMCもほぼ事前の予測どおり、

「現状維持」が決まったことで、

一時、1ドル100円割れに迫る急速な円高となり、

日経平均の上昇圧力を削ぐ形になっています。

日本市場がお休み中の日経先物は、

これを受けて乱高下していましたが、

これほどの円高が進行しているのに、

日本株が強力な上昇を続けていくとは、

少し考えづらいものがあります。

まだ「ど真ん中」よりやや上に顔を出したに過ぎず、

ここから先、継続した上昇を演じていくためには、

少なくとも為替が反転する必要があろうと思います。

いずれにせよ、この先、「難所」が控えています。

ともあれ。

黒田日銀が、非常に難しい局面のなか、

練りに練った戦術で芸術的な「対話」を行い、

市場の動揺を最小限に抑えたことは、

率直に評価してよいと考えます。

しかし、そもそもがこの金融政策を、

「何のためにやっているのか」という、

最も根本的で大事な部分において、

「迷走」が始まったといってよいと思います。

「2年で2%」という目標時期が撤廃されたことで、

「持久戦に入った」と報道されていますが、

前号メルマガで指摘しておいた通り、

いつまでに何をやるというコミットメントがなくては、

それはただのスローガンでしかありません。

黒田日銀はできることは全てやっているとした上で、

後は政府に責任を押し付ける格好になっていますが、

金融政策があらゆる手段を尽くしてもなお、

日本経済がちっとも成長しないのであれば、

黒田日銀が膨大なリスクを抱え込んでまで、

この3年半の間やってきたことの意味は何でしょう。

その上で、冷静に考えれば、

黒田総裁が金融政策のメインのターゲットを、

「長期(及び短期)金利」に移したことほど、

今の日本経済が置かれた状況を物語るものはありません。

私のメルマガ創刊以来ずっと述べているように、

「長期金利」こそが日本経済のアキレス腱です。

8月から「内部の人々」の苦悩について書きましたが、

「長期金利」は急上昇しても、急低下しても、

それぞれ別の経路で大きな悲劇を招きます。

9月21日に行われた黒田総裁の「対話」の中でも、

私のメルマガと全く同じ危機感が吐露されましたが、

「長期金利」の安定を主目標にすべきところまで、

日本の金融当局は追い込まれたと言えます。

問題は「長期金利の安定」という金融政策が、

世界史上、かつて例を見ない試みであることです。

日銀は、前例がないばかりか、考えた人すらいない、

非常に難しい目標を、極めて複雑なプロセスを通じて、

長期にわたって達成する努力を強いられるわけです。

これが何を意味するか。

黒田総裁が登場した当初と比べると、

日銀が置かれた様相は様変わりしています。

以前からの私の「警戒」をまとめるならば、

日本は今、大きく分けて3つの分野で、

看過できない巨大な「危機」を抱え込み、

日銀はこれと戦い続けることとなったと言えます。

その意味するところ。

そして、そこから導き出されるところの、

近未来における「危機」について、

次号メルマガ(第127号:9月25日)で分析します。

日本経済、財政、そして日銀自身が、

ちょっと容易ならざる状況での、

非常に難しい舵取りを要求されています。

もっとも、「危機」という言葉は、

「クライシス」と「チャンス」の両方を意味します。

正確に起こっていることの意味を知り、時流を読めば、

勝者になれる可能性が高いと私は考えています。

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