電力戦国時代と基盤的国策銘柄
今国会では、電気事業法(電事法)改正の「第2段階」成立がほぼ確実です。
(衆院はすでに通過。参院は昨日の本会議ハプニングで審議入りが遅れましたが)
いわゆる「電力自由化法」です。
全国9電力(沖縄を含むと10電力)体制がこれで崩れ、
基本的に電気事業への参入は自由になります。
日本の電力市場の規模は約16兆円ですが、
工場やオフィスなどの事業用電力はすでに自由化されており、
今回の改正(第2段階)は、一般家庭などの電力供給、
約7.5兆円が自由化されます。
日本の農業全体(約5兆円)を上回る、
巨大産業分野の大再編・大淘汰です。
すでに、巨大資本が続々と参入を開始しており、
躍進する最大手のエネット(NTT、東京ガス、大阪ガスなど)をはじめ、
資金力と技術力で勝負するトヨタや、
再生エネルギーに特化するソフトバンクなどが、
しのぎを削っています。
また、旧来の電力事業者も指をくわえているわけではなく、
関西電力や中部電力が東京電力管内に攻め込む準備をし、
逆に東京電力は小売り拠点を全国に広がるなど、
さながら戦国時代の様相を呈しています。
さらに、電力9社は、原発停止を受けて、
リスクヘッジのために大量にまとめ買いした天然ガスを、
逆にガス事業者として供給するべく圧力をかけており、
意外に新分野で収益を伸ばす可能性もあります。
こうして、国策によって大再編、大淘汰が始まった業界は、
誰が生き残るかわかりませんので、
私の選定する「基盤的国策銘柄」からは丸ごと外れます。
だからもう、東電や関電などは丸ごと外しています。
しかしこの「電力自由化」には、ちょっといびつなところがあります。
法律の立て付けは、「電力事業者」をまるごと、
「発電業者」「託送業者」「小売り業者」の3者にわけますが、
自由化されるのは「発電業者」と「小売り業者」だけです。
送配電網を有する「託送業者」は今後も規制で保護されますが、
彼らはどうやってもつぶれっこないビジネスモデルになるのです。
「発電業者」も、「小売り業者」も、
「託送業者」の送配電網に依存するしかありませんが、
託送料の「値決め」は、業者の申請を経産大臣が認可するだけで終わります。
その料金が適正かどうかは、大臣の諮問機関(有識者会議)がチェックしますが、
有識者会議の人選は経産省がやりますし、
会議での議論といったって、用意されたペーパーを読み上げるだけです。
国会も消費者庁も託送料金が適正かどうかはチェックしない建て付けです。
東電や九電などは今、すごい勢いで全戸にスマートメーターを配備中ですが、
家の入り口までの電力供給網を押さえてしまった業者が、
新規参入業者に対して圧倒的に強い立場にあるのは間違いありません。
「停電などの際は、東電(託送業者)ユーザーが先になる」などという
噂がちょっとでも広まれば、新規参入業者は太刀打ちできません。
(実際、電話の自由化の際、NTTはこの戦略で長く優位にいました)
「発電業者」や「小売り業者」が血で血を洗う大再編、大淘汰を繰り広げる一方、
誰が勝とうが負けようが関係なく、「託送業者」だけは、
お手盛りで決めた託送料金での安定経営が長く続くというわけです。
平成30年から32年までを目処に行われる、
「電力自由化」第3段階では、
従来の9電力は「発電」「託送」「小売り」の3つの部門に(名目上)解体されますが、
「託送」部門だけは、原発リスクや燃料費変動リスクからも切り離され、
安心、安全、堅実な経営ができるよう、最初から「祝福」されているのです。
経産省関係者から聞いた話では、
将来的には「託送」部門をいくつかの会社に統合する案もあるそうです。
「東日本電力ネットワーク」「西日本電力ネットワーク」みたいな名前の
広域託送業者ができれば、どうやってもつぶれないエクセレント・カンパニーです。
政治家も、役人も、熱い視線を送っていますが、
こういう会社ができあがれば、「基盤的国策銘柄」に加わる可能性があります。
日本市場は資本主義のようで、実は社会主義的な統制経済なのですが、
それがどうやって形成されてきたかは、今回の電力自由化の動きをみると理解できます。
日本市場はへんてこりんだからこそ、その特質を逆用すれば「負けない」投資ができる理由が、
これでおわかりいただけたと思います。
追記、
もっとも、政治の世界は一寸先は闇ですので、
第3段階の改革がなされる平成30~32年までに間に、
何があるか予想することは不可能です。
「託送をやるから●●株は強い」などと早とちりをして、
間違った投資をなさらないようお気をつけください。
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