「黄金のトライアングル」に乱れ。与党が勝って、株が下がったらえらいことです。
今回の総選挙は「人気投票」というより、「不人気投票」になってきました。
あの「GDPショック」で「アベノミクス失敗」の影がちらつく今、
安倍総理が好きとか、政権を支持するといった声は急速に小さくなりました。
官邸にコントロールされていたメディアも、スクラムを組んでいた増税で梯子を外され、
心なしか、これまでの不満を隠さずにぶつけるようになってきています。
しかし、だからといって、選挙で与党が窮地に陥るわけでないのが悲しいところ。
野党のほうがさらに不人気だからです。
民主党は前回敗北時よりさらに支持率を落とし、その他の弱小政党は軒並み1%前後。
まとまって巨大与党に対抗するどころか、野党同士で攻撃の矛先を向けあい、
毎日、「○○の選挙区で野党競合」というニュースで、与党の「当確」が増えます。
さらには、内紛が嵩じてついに消滅した集団まで出てきました。
再編劇は完全に民vs維の激突となり、次世代は両党を攻撃し、潰しあっています。
「支持政党なし」の無党派は6割近くいますから、
争点を明確にした上で、与党vs野党の構図に持ち込むことができれば、
地滑り的に野党が圧勝する可能性も十分にあるのですが、
このままではおそらく、白票や棄権ばかりが増える選挙となり、
与党が勝つというより、野党が勝手に自滅して終わりになりそうです。
無論、そうなることが明白だったからこそ、
今年の春頃から官邸の●軍師は「時は今」とタイミングを伺っていたわけです。
首相官邸が朝から晩まで眺めているのは、
・日経平均株価のグラフ
・為替(ドル円)のグラフ
・内閣及び政党支持率のグラフ
ですから、自民党政権に戻ってからはこれらを見ていれば、
「プロ」には次の展開がある程度予測できます。
ある意味で言えば、この3つの指標こそが「政権の命綱」です。
しかし、この秋になって、この3つの指標の連動に異変が生じています。
第2次安倍政権誕生後、ずっと、継続してきたのが、
「円安」=「株高」=「支持率高」
という「黄金のトライアングル」でした。
しかしここにきて、「円安」は「株高」を意味しなくなり、
「株高」を達成しても、内閣・与党の「支持率」はちっとも反応しません。
「自民勝利で年末20000円」と気楽に予測するアナリストもいますが、
なぜそうなるのか根拠が示されたのを見たことはありません。
安倍政権の経済政策(というより「経済実験」)アベノミクスを、
人々も、マーケットも「支持」していた時代が終わりつつあるのだとすれば、
政権は今後、経済政策のあり方について、よほど深く考えなければいけません。
与党が勝って、株が下がるとなったらえらい話です。
私としては、アベノミクスはまだ矢を3本とも射たわけではありませんから、
やるべきことをきちんとやれば、少なくとも「株高」と「支持率高」が連動し、
アナリスト諸氏のいう20000円も不可能ではないと考えていますが、
ミッドウェー海戦なみの大誤算であった「GDPショック」の後、
与党内でふたたび守旧派と改革派が暗闘を開始したのをみると、やや不安になります。
昨日も申し上げましたが、総選挙はもう、全く別の「争点」へと移行したようです。
それはすなわち、与党と野党のどっちが勝つかの戦いではなく、
与党のなかでどっちの路線が勝つかという戦いであり、
それを経て、政権が「有権者の信認」とともに「市場の信認」を得るかどうかです。
政権側もバカではありませんから、そのあたりは認識し始めているようです。
今日、衆議院が解散され、名実ともに選挙戦が始まります。
有権者との対話。市場との対話。
安倍政権の本当の戦いが、いよいよ始まるのです。
私たち投資家にとっても正念場です。
市場、とくに海外投資家のアベノミクスをみる目が変わりつつある今、
場合によっては、投資スタンスを大転換する必要があるかもしれません。
次号メルマガ(31号:11月23日発行)で、真剣勝負の分析をしますので、お楽しみに。
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