総選挙のアノマリー
内外が注目した安倍総理の解散演説。
「この演説でほぼ決まる」と言われただけあって、首相官邸は気合を入れていましたが、
内容的に薄く、総理の顔色も悪く、やや空振り気味ではあったようです。
世論の反応はともかく、少なくともマーケットはあまり評価しませんでした。
「経済対策」なるものの具体策がなく、何より、構造改革、規制改革への言及なし。
これでは、長期資金の失望を招いても仕方ありません。
演説開始前には「期待」で17400円まで戻した日経平均先物は、30分で200円下げました。
ただし、そこからメチャクチャに売り込まれるような展開にはなっていません。
黒田バズーカで息を吹き返したNY市場が再び強くなっているというのもありますが、
まだ、安倍政権とアベノミクスへの「期待」はつながっています。
「総選挙のアノマリー」というものがあります。
解散総選挙は、とくに与党優勢のときは、株価は上がるものです。
具体的な与党公約が出て来るのはこれからですし、
すでに選挙対策の盛大な「バラ撒き」が始まっています。
公共工事をやり、商品券を配れば、建設や小売りなどが牽引する形で、
日経平均株価は必ず上がります。
急遽、解散が21日に延期されたのは、積み残しの防衛省給与法を通過させるため、
会議のための海外出張中の防衛相の帰国を待つことにしたからですが、
畏れ多くも天皇陛下の解散詔書(紫の袱紗)の段取りより、
20万人の自衛隊票、100万人単位のOB票の確保が優先されたわけです。
自衛官の給与アップは必要な措置ではありますが、
選挙後に法律を通して遡って支給するよりも、選挙前に現金を渡したいのでしょう。
官邸の要望でわざわざ19日の日程をあけられた陛下に不敬な気もしますし、
そもそもこの解散を憲法第7条(天皇の国事行為)でやること自体に疑義があり、
「総理の解散権濫用」でまたしても憲法違反の提起もなされそうです。
しかし、そうまでして、政府・与党は確固とした意志でもって、
「バラ撒き」による票集めをする意志をみせたわけです。
これはこれで市場は素直に反応するでしょうから、
「解散のアノマリー」、「年末アノマリー」とあいまって、
与党が勝利する見込みのある限り、株価は一時的に上がるでしょう。
繰り返しますが、「バラ撒き」をやれば、株価は一時的に「必ず」上がります。
そして、一時的に上がって、いずれ「必ず」下がります。
私としてはそこが勝負かな、と思っております。
選挙民に甘い顔をすることに専念し、「痛みを伴う改革」を先送りしたことを、
内外の長期投資家は決して見逃していません。
憂慮しているのは、海外主要誌が一斉に「アベノミクス失敗」を報じ始めたこと。
「日本経済はこれまでモルヒネを打つばかりで、手術室に入るのを拒否してきた。
今もまだ、モルヒネを打ちながら、ずっと「手術の方法」を議論している」
というWJ紙の痛烈な皮肉は、悔しいことに完全に本質を衝いています。
私としては、それでもまだアベノミクスは終わってないと考えており、
いずれ「第3の矢」を放って、見事に「手術」を成功させることを信じてますが、
内実を知る私ですら、そろそろ焦れてきました。海外投資家はなおさらでしょう。
無論、選挙に大勝すれば、政権基盤は固まりますので、
与党内の抵抗派を振り切って規制改革に手をつけるはずではありますが、
自民党が単独過半数を失うような展開となれば、安倍政権は弱くなり、
海外主要紙が懸念するとおりに、重篤のまま手術もできなくなります。
今後の株価の行方を見ていくには、そのあたりがポイントになると思います。
野党共闘を試みる動きも、そろそろ佳境にさしかかっています。
前号メルマガではっきり書いたように、みんなの党は今日か明日には消滅する一方、
橋下・松井の出馬が取沙汰されて維新の動きは東西で大きく乱れています。
民主党某氏の仕掛けるあの構想がうまく機能するかどうか。
こちらのほうも、今週がヤマ場になるでしょう。
こんなあたりから、総選挙前後の上値メド、そしてその後の展望が見えてきますので、
次のメルマガ(31号:11月23日発行)で詳しく分析することにいたします。
近いうち、「安心、安全、堅実」なゾーンが出現するように思いますが、
いずれにせよ、「選挙は最後の一分」まではわかりません。
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