政府は全企業を2つのグループにわける
日本の全企業数は430万社。
うち、0.3 %が大企業で、99.7%が中小企業です。
全従業員4000万人のうち、
約3割が大企業、約7割にあたる2800万人が中小企業です。
政府はゆくゆくは、
これらの企業を2つのグループにわけるつもりです。
すなわち、
1)グローバル成長型企業
2)地域需要創出型企業
の2つです。
これらはもともと中小企業の創業支援のために作られた
カテゴライズだったのですが、
国内産業の統制政策全体に行き渡る見込みです。
私が「基盤的国策銘柄」に選ぶような大企業は、
「グローバル成長型」の「完成形」です。
中小企業庁のホームページには、
「グローバル成長型企業」と「地域需要創出型企業」について、
まあ、「グローバル成長型企業」の解説に、
グローバル成長型とは、「大企業等からのスピンアウト人材等が、
高度な技術・サービス・システムや革新的なビジネスモデルなどをベースに、
グローバル市場の獲得を念頭に迅速な事業拡大を目指して創業・起業するもの
とある時点で「てんでダメ」なのはみえてます。
アップルやグーグルの例を挙げるまでもなく、
我が国発祥のトヨタも、ホンダも、ソニーも、ユニクロも、
そんなふうに発展したかどうか。
実際の歴史を振り返れば、
経産省(中小企業庁)がイノベーションというものを
まるで理解していないことは明らかです。
ともあれ、今後、すべての中小企業に、
このスキームを当てはめていこうというのが、
政府(経産省)の考えです。
「ものづくり大国を目指す」とはいうものの、
政府の「中小企業海外展開支援大綱」を読めば、
「グローバル成長型企業」は必然的に生産拠点を海外に移さざるを得ず、
また、その方向で官民挙げて支援していることがわかります。
消費地に近いところで、安い労働力で生産をすれば、
会社は儲かるに決まっています。
儲かったお金はますます「グローバル成長」に回されるわけですから、
企業はどんどん収益性を上げ、株主利益は増大するでしょう。
株価の上昇、GDPの増加を目指すのであれば、
これが最も効率がよいのでしょうから、
今後もこれは「国策」として推進されるはずです。
政府のおメガネにかなう大企業、大企業候補は、
こうして、いつまでも「安泰」なわけです。
もっとも、外国人が大多数の株を保有し、
経営陣も外国人だらけのその会社を、
どうやって「日本企業」と定義するのかは疑問が出るでしょうが・・・。
では、海外に生産拠点を移した後、
仕事がなくなった日本人はどうすればいいのでしょうか。
「海外の成長を取り込む」というサイクルから外れた人々は、
「地域の需要を創出して」働けというのが政府の考えです。
中小企業庁の解説によれば、
地域需要創造型とは、都市・地方を含め、若手・女性層などが中心となって、
個人や少数従業員の企業、複数人による協働をはじめ、
活力ある「小さな企業」として、主として地域の需要や雇用を支えるものとして
創業・起業するもの(ネット販売を通じ、国内外に販路拡大をすること等はあり得る)を指します。
とのことですが、私が聞いた官僚は、
「要するに、地べたでべたっと踏ん張って生きていくということです」
と、口を滑らせました。
つまり、
「店員、配送、介護、訪問販売、農業、修理などで、
なんとか食いつないで欲しい」
というのが本音なのでしょう。
昔は機械工場や化学プラントで高給をとっていた技術者が、
今はタクシー運転手や弁当の配達などで食いつないでるという話は、
いくらでも聞きますが、
今後もこれが「国策」として推進されるということです。
無論、「地域需要創出型」でも十分な賃金が稼げればいいのですが、
残念ながらそうではありません。
政府は「失業率は増えていない」と胸を張りますが、
これまで製造業からサービス業に転職した人は、
ほとんどの場合、平均賃金が半減したことは政府統計に示されています。
そして、もともと賃金の低いセクターに大量の労働力が流入するので、
ますます賃金が下がるわけです。
本来ならば、大企業のベアばかりでなく、
大多数の国民が従事する「地域需要創出型」の人々の賃金を
どうアップさせるかを論じるべきですが、
国会では全く議論になっていません。ほぼ皆無です。
マスコミも知識人もほぼだんまり。
賃金が上がる保証もないところで、
インフレになれば庶民の生活は苦しいばかりなのですが、
まあ、国民がそういう政府を選んだ結果なのですから仕方ありません。
おそらく「時代の流れ」として諦めたのかもしれませんが、
「グローバル成長」を遂げる「企業」はどんどん大きくなり、
「地域需要創出」でがんばる「従業員」はいつまでも貧しいまま
というベクトルの政策パッケージしか存在しないのです。
良い悪いとか、好き嫌いとかの問題ではなく、
現実として、これが「国策」です。
この方向性は、かつての自民党時代に始まり、
民主党時代に大きな骨格を固められ、
安倍政権でも強力に推進されていますので、
よほど変わった勢力が政権をとらない限り後戻りはないでしょう。
今国会では「小規模企業振興基本法」が通過する見通しですが、
「町工場から世界を目指す」といった気概は消え、
「小さな会社は地域でがんばれ」という「統制」が徹底します。
このブログは政治的な提言などをする場ではありませんから、
これ以上、この「国策」の評価はしないようにしますが、
相場の行方を考えるという意味で、
投資家の方々はしっかりアタマに入れておくポイントだと思います。
厳然たる事実として、
海外に生産拠点を移し、海外でモノを売る企業は、
国策として政府に保護され、何重もの支援を受けます。
日本国民を相手にし、日本国内で商売する会社のために、
小さくなる市場を大きくしてあげようという国策はありません。
(公共工事は別ですが、借金頼みの財政出動はやがて限界がきます)
超長期的に、安心、安全、堅実な投資をやろうと思ったら、
このメガトレンドは無視できないことは言うまでもないでしょう。
私のブログの読者の皆さんには、常に、
相場において賢く生き残り、富を掴んでいただきたいと、
心から思う次第ですが、
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時流をよく見極め、
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賢く、堅実に、富を掴んでいただくべく、情報発信につとめてまいります。
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官僚好みの統制経済政策の下での、将来のグローバル成長型日本製造業なるものの姿とは、ある面では海運会社のようになってしまうのでしょうか?
つまり、会社登記上は日本法人で、船籍はパナマで、船員はフィリピン人や中国人で、、、そうなると日本人の雇用の場は極めて限られそうですね。
そして、蒋介石政権時代に遡る瑕疵を理由に工場を差し押さえられてしまう、とか。
わたくしは、自分が投資家として生きていければどんなに素晴らしいことであろうと思いながら、今日もブログを読ませていただいております。
脱藩浪人様
コメントありがとうございます。
ある意味、時代の流れを「追認」しているだけなのかもしれませんが、官僚が日本企業のあり方を「統制」するという発想はいつ聞いても違和感を感じます。経営者には独特のセンスと能力と気概が必要です。トップ校のMBAホルダーや中小企業診断士が会社をやってもうまくいかないことが多いものです。トー大を出て、コーム員試験に合格したからといって、それは記憶力と論述力を証明したにすぎません。汗をかいてモノを作ったり、頭を下げてモノを売ったことを、一度もしたことのない官僚が、アタマで考え、会議室で議論し、机の上でまとめた書類のとおりに全企業の活動を「指導」し、「統制」してうまくいくと考えている自信がどこからくるのか。どんなに長くつきあっても、私にはさっぱりわからないのです。せめて、切れば血が出る生身の人間の痛みを理解する努力をしてくれればいいのですが。
もっとも、「投資家」としては、政府のあり方に文句を言うよりも、どうやって生き残り、富を増やすかを考えるべきです。奇妙奇天烈でクセの多い市場であればあるほど、攻略法はみえてくるものです。実際、海外投資家はアベノミクス狂想曲をシビアにみており、「日本ではイノベーションは起きない」と見限りつつも、「日本政府が保護する銘柄は安心」とロングポジションを増やしているようです。(私と同じ発想ですね・笑)