「南欧不安」と安倍政権の「正念場」。
昨日の日経平均は反落。
北朝鮮をめぐる「地政学リスク」は後退し、
米国の長期金利の上昇も一段落していますが、
南欧の政治不安という新しい材料が、
俄に市場の不安要素として台頭したことで、
円高、日本株安の圧力がかかりました。
「南欧不安」は世界にも広がっており、
米国株も大きく下げる展開となっています。
日本の安倍政権は「正念場」を迎えていますが、
このタイミングで海外からの危機は困った話です。
政権はいくつか株高の「玉」を示しつつありますが、
昨日時点では市場はあまり良い反応をしていません。
「骨太の方針」の中身が一部リークされ、
消費増税の反動減を防ぐ対策が示されましたが、
目新しいものはなく景気浮揚効果が疑わしいのに、
将来の財政不安はむしろ昂進したといえます。
もっとも、安倍政権がしっかりと健在ならば、
少なくとも総裁選での勝利を確実にするまで、
二の矢、三の矢を放ち株高を維持しようとするでしょう。
詳細はまた次号メルマガ(第215号:6月3日)でも述べますが、
特に資本市場や労働市場、そして人口増に関する「玉」は、
株価に長期的な押し上げ効果があるかもしれません。
しかし、問題はその「玉」を出す安倍政権が、
本当に秋以降も存在できるのかという点です。
政権は今、また本格的な窮地に追い込まれており、
政局的にかなり不安定で流動的な状況になっています。
結局、昨日も「働き方改革」法案の衆院通過を断念し、
ついに会期の延長を余儀なくされそうな雰囲気です。
会期末を死守して手荒な国会運営をやるよりも、
会期を少し延長してでも法案の審議を丁寧にやり、
政権のイメージを向上させようという判断でしょうが、
永田町では政治的に「大きな失点」と受け取られています。
月曜の予算委で疑惑追及をパチリと退けるどころか、
新たな論点に対する大きな攻撃を招いてしまいましたので、
会期を延長することがまた大きな窮地を引き寄せ、
政権の延命を危うくする可能性も否定し切れません。
このところの国内政治での失点を補ってあまりある、
外交的な大きな成果を上げるために、
政権は上から下まで躍起となっているところですが、
6月以降の外交戦での「反転攻勢」を成功させるには、
国内政局で「突然死」をしないことが何より大事です。
前号メルマガ(第214号:5月27日)で詳述した通り、
安倍政権がクリアすべき「法的な問題」というのは、
極めて本質的で危ういものを孕んでおり、
追及の機会が増えれば増えるほど首が絞まっていきます。
その意味で今日、久々に行われる党首討論(QT)は、
政権の死命のかかったものになりかねませんので、
永田町も市場も緊張感をもって見守る一日となりそうです。
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