「国策事業」は買いか売りか。
東京に雪が降った昨日、相場のほうは熱気が漂っていました。
前夜のNY市場が大きく下げたのを押し返し、一時はプラス転換するほどの底堅さ。
東証の売買代金は2兆2494億円と盛り上がっています。
もちろん、欧米が敏感に反応しているギリシャ情勢は少々やっかいであり、
本日の日銀決定会合でどんなサプライズが出るかわかりませんから、
当面、買わないで様子見の人も多いようですが、
さりとて、最終的にギリシャ問題が妥結するとみられる限り、大崩れもしません。
よほどのことがない限り、春先までの見通しは明るいものがあります。
銀行や証券など、「基盤的国策銘柄」のコア中のコアが急上昇中です。
これらの銘柄が順調に上がってくれば、この上昇局面は長く大きなものになるはずです。
「政策に売りなし」といいますが、政策要因がフル出動する限り、
「日本経済の基幹中の基幹」である「基盤的国策銘柄」は底堅く推移するものです。
ところで。
私が定義する「基盤的国策銘柄」は、「国策事業」とは異なる概念です。
何をもって「基盤的国策銘柄」とするかは、メルマガで毎回解説していますが、
たいていの場合、「国主導」、「官主導」の「国策事業」は外しています。
本来的に公的部門がやってよいインフラ関連産業ならばともかく、
政府の肝いりでイノベーティブな「新産業」を興そうという試みは、
日本だけでなく、世界の歴史のどこを見渡しても失敗するからです。
理由は簡単です。
「新産業」はまず、大量参入、大量淘汰のプロセスを経るからです。
20世紀前半の自動車産業、21世紀はじめのIT産業など、
いずれも大量の新規参入があり、壮絶な大量淘汰があってから、
いくつかの有力企業が残って、社会の「基幹産業」となりました。
政府といえど、この「大量淘汰」に勝てるかどうかは不透明です。
新産業は多くの場合、資金力やスケールメリットで勝負が決まるわけではなく、
スピーディーにイノベーションを起こせるかどうかで決まります。
したがって、「国主導」でやったからといって勝てるわけではないのです。
また、公的機関が競争市場に参入する際に、致命的な欠点があります。
「決定する人」と「責任をとる人」と「リスクをとる人」がバラバラなことです。
苛烈な競争を勝ち抜くには、この3者は常に一致している必要がありますが、
昔から「親方日の丸」の事業体では、
・「決定する人」=政治家、高級官僚
・「責任をとる人」=不明
・「リスクをとる人」=国民
となるものと相場が決まっています。
ある事柄について「やるかやらないか」の重大決定を下した当人は、
その事柄が本格化する数年後にはもう異動していなくなっており、
どんなにど派手に失敗したとて後で責任を問われることはありません。
国鉄、かんぽの宿、グリーンピアなどなど、改めて例を挙げる必要がないほど、
こうした失敗例はたくさんあります。
いずれも垂れ流された壮大な赤字を国民がかぶりましたが、誰も責任をとっていません。
それらの事業を率いたリーダー達は、かつての「神童」(超偏差値エリート)ですが、
構造的な要因で力が発揮できず、スポイルされ、自分が逃げ延びることに注力しました。
「国策事業」として競争市場に参入する際には、こうした致命的な欠点があるのです。
基本的に私は、政府がやることを支持はしても、信じはしませんし、
政治家や官僚に貴重な資金を賭けるのはバカらしいというのが信条です。
私は今、こうした不安を、安倍政権が浮沈をかける「国策事業」である、
「水素社会」のインフラ構築について感じています。
もちろん、水素で動く燃料電池車が「世界標準」となり、
日本と日本国民に空前の大繁栄をもたらす可能性は、私も否定できません。
また、私は世界最高峰の経営陣と従業員の揃うトヨタを天晴れだと思います。
しかし、「水素社会への転換」は「国策事業」として行れれる以上、
国の決定と関与が大部分であり、トヨタ一社ではコントロールできません。
そして国内インフラを整備できたからといって、
世界市場で燃料電池車がスタンダードをとれるかどうかは別問題です。
トヨタのチャレンジ精神や技術力はどんなに賞賛してもしすぎることはありませんが、
それが投資として「安心、安全、堅実」であるかどうかは違う話なのです。
政府が本腰を入れて「水素社会」を構築する決意を示したのを受け、
トヨタの株価がうなぎ登りに上昇しているのも「国策事業」の特徴ですが、
ある時点で「要注意」の兆候があらわれてきたら逃げたほうが賢明です。
それはどんな時なのか、そして何に注意すべきなのか、
次号メルマガ(第44号:2月22日発行)で詳しく分析してみたいと思います。
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