「強い」から生き残るのか。「速い」から生き残るのか。
昨日の日経平均は小反発。
もっとも、寄付からお昼までは「先高感」を反映したにもかかわらず、
20500円台中盤と、わりと高く推移したものの、
後場では売りに押されて昨日終値付近で終わりました。
したがって、反発といってもわずか、14.68円高。
週末の米国雇用統計を控えて、売り買いともに大きくは動けません。
やはり、上に行くにせよ、下に行くにせよ、本日夜の指標次第です。
何ごともなければ、日経平均は、もう一度、上値をとりにいきそうですが、
事実として昨夜のNY市場で利上げ警戒が台頭し、大きく下げたように、
波乱の展開となることを警戒する投資家も多く、
長期目線の投資家も、ここはいったん様子見となさる場面でしょう。
IMFはあと1年ほどは利上げをするなと言いましたが、
米国が利上げをするかどうかは指標で決めます。
そして、指標だけは蓋を開けてみないとわかりません。
ところで。
国会の事務方(両院の事務局)が緊張し始めています。
議会を意味する英語「Diet」とは、もともと「日程」のことです。
議会制民主主義の国においては、議会による「議決」で全てが決まります。
それゆえ、「いつ審議がなされ、いつ採決されたか」かは絶対なのです。
逆に言えば「審議できない、採決されない」ならば法律も予算も通過せず、
国家の全機能がストップしてしまいます。
「国会日程」というのは、ある意味、「国家そのもの」なのです。
それゆえ、日本のみならず議会民主制各国の議会においても、
「日程闘争」の駆け引きが行われるのは、民主主義の宿命のようなものです。
かつて日本の国会で社会党が「牛歩戦術」をやって顰蹙を買いましたが、
米国でも「議事妨害」(フィリバスター)は悪名の高い名物です。
(フィリバスターはもともと「海賊」「略奪者」を意味する侮辱的な言葉)
今、日本の国会では安保法制の議論がいきなりヒートアップしています。
昨日は与党が呼んだ参考人が法案を「憲法違反」と断じるという、
前代未聞の「オウンゴール」まで発生して審議は大荒れです。
衆参両院の事務方が気にしているのは、「日程が足りなくなる」こと。
今国会の会期は6月24日ですが、一回までは延長が可能です。
お盆明けには予算や臨時国会の準備でわりと忙しくなるため、
おそらくお盆前(8月10日頃?)まで延長するとみられていますが、
一回延長して会期末を設定したら最後、再延長はできなくなります。
つまり、国会はあと2ヶ月ちょっとしかないのですが、
安保法制が重要法案だから「審議を尽くす」と言っても、
衆議院と参議院のそれぞれを1ヶ月で審議を終え、
採決まで持っていかないと「時間切れ」になります。
しかし、両院それぞれ「100時間の審議」をこなすには、
やはり1ヶ月はかかりますので、なかなかギリギリの日程なのです。
「揚げ足取り」だろうが何だろうが、野党側が審議拒否を繰り返し、
日程が後ろ倒しになっていくのをみると、政府・与党、事務方は、
毎日、毎日、胃が痛くなってくるわけです。
悪いことに、今国会は安保法制以外にも「爆弾」が控えています。
それらの「爆弾」はいずれも与野党の折り合いがつかず、
国民の間にも広範な抵抗感がある法案なのですが、
もし、答弁の不手際や不祥事等の事情で審議が全面ストップし、
1週間とか2週間とか国会全体が「空転」するようなことになれば、
最悪の場合、日程が足りず、いずれの法案も不成立になりかねません。
そんなことになれば、政権にとっては致命的なダメージです。
無論、衆参両院で与党が多数を占めますので、
いざとなったら「数の力」で「強行採決」を連発し、
会期末に無理矢理通してしまえばいいのですが、
それをやって崩壊に至ったのが他ならぬ第1次安倍政権です。
「強行採決」をやれば確実に内閣支持率が大いに落ちますから、
安倍総理にとっては個人的にもトラウマになっています。
一昨年の特定秘密保護法でも「強行採決」一発で支持率が10ポイント下落し、
官邸は大いに動揺し、総理は国民向けの「お詫び会見」を強いられました。
また、世論だけでなく、党内の「アンチ安倍勢力」の動きも要注意です。
もし、政権側が安保法制のような重要法案で「強行採決」を連発し、
世論の反発を招くようであれば、政治責任を問う声も出かねません。
それゆえ、与党内の「アンチ安倍勢力」は内心ほくそ笑みながら、
野党側が国会審議で日程闘争を仕掛けてくるのをみているわけです。
・・・と、ここまでは前々号、前号メルマガで書いたことですが、
今週になって突然浮上した年金機構の情報流出のような「雑音」が、
国会審議に影響を与えるということが何を意味するのか、
読者の皆様はおわかりいただけることと存じます。
現時点では、年金機構の問題が塩崎厚労相の政治責任に及び、
それが、国会審議にまで影響を及ぼすかどうかわかりませんが、
すでに安保法制の審議日程にズレが出始めた今、
政府・与党側が慌て始めているのは間違いありません。
永田町では今、みんなしてカレンダーを睨みながら、
このような「日程闘争」を「主戦場」とした、
手に汗握る駆け引きが毎日のように行われています。
もちろん、官邸側も水面下の国会対策に余念はありませんから、
私も、「国会運営の不手際」を理由に安倍政権が倒れる展開には、
おそらくはならないであろうとは思っておりますが、
しかし、薄氷の上を渡りつつあることは間違いありません。
過去、何度も「あれ?」と思うような些細なことから、
「まさか」と思うような大きな組織や勢力が倒れた経緯もあります。
やはり私としては、もうアベノミクスが最終盤に差し掛かった今から、
「安倍政権は強いから大丈夫」と長期目線の買いを入れる気には、
やはりならないのはこうした「脆さ」「危うさ」を知っているからです。
政治的な場面などでは、たとえ「負けたら滅びる」ような場面でも、
我が身を顧みず、自らの信条を貫いて勝負するのも立派な生き方です。
しかし、投資においては信条やスタイルなどはどうでもよく、
ただただ、「負けは負け」「滅んだら終わり」なのです。
「臆病者」とバカにされようと、「狼少年」と誹られようと、
「危機のシナリオ」が迫っているときは最大限に警戒し、
無様でも、見苦しくても、間違っても退場を食らわないよう、
逃げて逃げて逃げまくってでも、生き残ったら「勝者」です。
体躯堂々とした恐竜は「強い」には強かったのですが、
あたかも投資において資金を一銘柄に全投下するように、
「温暖な気候」に全てを賭けて、最大限進化した結果、滅びました。
一方で、体の小さい哺乳類は足が「速い」利点を活かし、
危険から素早く逃げ、変化した環境に見事に適応し、地上の王となりました。
確かに、「アベノミクス相場」は日本経済史上に残る一大チャンスであり、
多くの人を富裕層に押し上げはしましたが、
しかし、いつかは終わるものです。遅かれ早かれ「必ず」終わります。
まだ、日経平均には上値余地がありますので、順張り投資家(買い)の方が、
あわてて全ポジションを解除する必要はないのかもしれませんが、
すでに、先見性のある人は「次の時代」を見越して、
もう、着々と準備を始めていることも忘れてはならないポイントです。
「生き残る」には、時代の動きを敏感に察知するしかありませんが、
この話はまた、次号メルマガ(第59号:6月7日発行)で詳しく書きます。
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