ユーロ危機で、苦い思い出があります。

為替(FX)の話です。

ちょうどユーロ円が100円の頃、

このまま90円台に突入し、

史上最安値は確実とみられていました。

私は、そこまでの下落でずいぶん利益を出していましたが、

「超一流」の人々からあらゆる情報を集め、

ファンダメンタル的にも95円くらいまでは確実に行くと計算し、

欧州首脳の発言や、欧州金融機関の動きなども徹底的に分析し、

「ユーロ存続に疑問符がつく」

「ソブリン危機から金融システム危機に移行する」

ことを確信し、追撃の「売り」で勝負に出ました。

もっとも、私だけがそう思ったのではなく、

当時は、メディアも市場も「総悲観」でした。

今思うと、これがまずかったのですが、

心のどこかで「みんながそう言っているから」と安心し、

ちょうど100円から追撃売りを断行したのです。

その直後に、99円を割り、かなりの含み益が出ました。

しかし、ここで「予想外」のことが起きたのです。

「欧州首脳の思惑が一致しそうだ」という、

根拠不明の情報が市場を駆け巡り、

ユーロは一気に反騰を始めたのです。

朝起きたら含み損が出ててびっくりしましたが、

どんなに情報を探っても、

上げの根拠となるようなものはなく、

「急落前の調整だろう」くらいに思って、

損切りすることなく様子をみていました。

私としては、自分の「予測」に絶対の自信を持っていたのです。

ところが。

ヘッジファンドはそこから猛烈に買ってきたのです。

冷静になって考えると、

市場のほぼ全員が「ユーロは売り」とみて、

半年以上も猛烈に売って、売って、売ってきたのですから、

ここで踏み上げをくらうとパニックになります。

どういうわけか、

「ドイツが他国の債権を引き受けると合意した」

「欧州共通債で合意。制度設計が始まった」

など、ありもしない「噂」がまき散らされ、

ユーロは一気に10円近くも値を戻しました。

私は「そんなことはあり得ない」とはわかっていたものの、

「万一そんなことになればやばい」という「恐怖」にかられ、

105円近くで損切り。

そこまでの下落局面で稼いだぶんを、

かなり吹っ飛ばしてしまいました。

その後のユーロ円の動きは皆さんもご存知のとおり、

結局のところ、欧州首脳の思惑の違いが浮き彫りになり、

ふたたび売り込まれる局面となり、

最安値94.10円まで下落。

皆の「予測」も、私の「確信」も正しかったのです。

しかし、「予測」が正しいからといって、

儲かるわけではないのが相場です。

リーマンショック以後、

特にその傾向を強めていますが、

市場はもう、

きわめて少数の政策当局者(各国首脳、金融・財政当局)と、

両手で数えられるくらいの巨大ヘッジファンドに、

完全に「操作」されています。

政策当局者の「意志」は、

その時々の政治的パワーバランスによって、

目まぐるしく変わります。

午前と午後で潮目が正反対になったりします。

ヘッジファンドは、

市場の「予測」を「裏切る」イベントを仕掛け、

大きなボラティリティを出すことで利益を得る人々です。

どんなに精緻に「予測」を積み上げたところで、

その前提となる外的要因、政策要因は一瞬で変わりますし、

市場参加者のほぼ100%が、ある「確信」を持った瞬間が、

ヘッジファンドにとっては「裏をかく」ことで大もうけするチャンスです。

だから、このときを境に、

2度とふたたび「予測」に基づく投資はしないと決めました。

「予測」は必ず外れる構造になっているのです。

直近の相場でもそうです。

昨年5月の大暴落のちょっと前、

「昔から、ドル円は上昇が一段落すると、

ちょっきり10円ほど調整するクセがある」

と警鐘を鳴らした人がいましたが、

ある意味、これがサインでした。

市場参加者のほとんどは1ドル110円や120円になると信じてましたが、

ヘッジファンドはその裏をかいてアベトレードを巻き返し、

「10円調整」をイベント化させて103円からちょっきり10円戻しました。

市場が一方向に動くとき、巨大ヘッジファンドには、

常に「裏をかく」インセンティブがあり、

適当な「情報」を市場に流して、

皆の「予測」を粉々にするのです。

政策要因はもっとえげつないです。

永田町や霞ヶ関にいると、

国家レベルの重要政策が、

トップ数人の個人的な人間関係や貸し借りによって、

ぱーんと瞬間的にひっくり返ることをしょっちゅう見ます。

政策がひっくり返るまではいかなくても、

「有力者」といわれる人が、サプライズの「要人発言」をし、

他の人々が数日間、反論しないだけで、

市場はパニック的に一方向に動きます。

相場が行くところまで行き着いた頃、

おもむろに「当局」がそれを否定して、

元通りに値を戻すのですが、

その時点で、多くの市場参加者が損を出している一方で、

こっそりと、その「上がり」をかすめて、

しこたま大もうけをしている人もいるのです。

彼らは、もうけたお金の一定割合を、

時間を置いて、いくつもの迂回ルート(合法的)で、

その「有力者」側に献金すれば、次のチャンスがもらえます。

個別株でこれをやると株価操作で逮捕されますが、

政治家が政策論争にかこつけて相場全体を変動させるのは合法です。

私達はこういう世界で相場を張っているのです。

だからこそ、私はいつも、

刻々と変わる状況を、いかに「予測」するかではなく、

刻々と変わる状況に、いかに「対処」するかと申し上げているわけです。

「予測」は、それが正しければ正しいほど、

必ず外される構造になっているのですから。

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※本ブログは国際情勢、政治、経済に関する情報分析と、私自身の相場分析、トレード戦略をお伝えすることが目的であり、読者の皆様への投資助言、推奨のようなことは一切行っておりません。また、記事の内容には万全を期していますが、市場では常に「想定外」の事柄が発生する以上、その正確性を保証するものではありません。さらにいえば、相場予測が正しくても、それで勝てるとは限りません。読者の皆様が、本ブログの記事を参考にトレードなさり、損失を出されることがあっても、筆者はいかなる意味でも責任を負いかねますことをご承知おきください。いずれにせよ、投資においては自己責任が絶対の原則ですから、情報武装、知識武装、リスクヘッジに万全を期されることをお勧めします。皆様が大きな富をつかまれることを、心よりお祈り申し上げます。

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